ぼくらとエロの○○な関係。TISSUE BOXのキービジュアル

第一線で活躍する総勢22名のアーティスト、文化人、クリエイターに「自身とエロの関係」について聞いていく。 はたして、彼らにとって「エロ」とは?

呂布カルマさんの写真

暗黙の了解やタブーも恐れず、自分のスタンスを切れ味鋭い言葉で撒き散らすラッパーたち。今回話を聞いたのは、こと見て見ぬ振りされがちな「エロ」に真っ向から立ち向かうラッパー・呂布カルマ。フリースタイルダンジョンをはじめ、さまざまなメディアに引っ張りだこの彼だが、はたして創作活動する上でエロはどれほど作用しているのか。これまであまり触れられなかった、エロが彼の表現にもたらすものについて、包み隠さず語ってもらった。

ラッパーになる前、4年間の卓上で費やした初期衝動

呂布カルマさんがソファに座ってティッシュを眺めている様子

−呂布さんがラップをはじめたのはいつ頃でしょうか?

呂布:大学生の頃ですね。HIP-HOPを聴くようになって半年くらいして自分もリリックを書き溜めていたのですが、人前でラップをはじめたのは大学を卒業してからですね。在学中の頃は、やりたいなと思いながらもモジモジしていて。その当時は、漫画を描いていたこともあって、そっちをメインでやっていました。

−世に出る前にはどんなリリックを書かれていたのでしょうか?

呂布:最初はただ韻を踏むのが面白かったですね。ひたすらライムを考えて、ストックして。でもどちらかという韻を踏めればなんでも良いみたいな感じで。手当たり次第に踏んでいる感じが、結構今思い返してみると下品というか…。若い奴にありがちな〝踏みたがり”特有の恥ずかしい感じのライムなんすよ。

呂布カルマさんの写真

−“踏みたがり”…。

呂布:はい。ひたすら四字熟語で踏んでいく、みたいな。そういったアクを出し切った後に、ステージに立つようになりましたね。

−その「恥ずかしい時期」を他者に見せずステージに立てたことを羨ましいと思う人もいそうですね。ときにタブーとなるようなテーマを扱うラッパーという仕事をご自身でどう感じていますか?

呂布:普段口にしたら怒られてしまいそうな言葉なのに、逆に評価されるという気持ち良さはありますね。変に咀嚼せずに、起きたこと感じたことをダイレクトに言い切ってしまうのは、他のジャンルの音楽にはできない表現だとも。だからこそ日常の地続きでやれている感覚がありますね。変な気を使う必要もないし、自分の天職だな、って。俺、ポエム嫌いなんですよ。

−でも言葉尻一つで大きな誤解や炎上を起こしたりもしますよね。

呂布:そうですね。そいつの美学が言葉にもろに出てしまうから、発する言葉1つひとつ気をつけるようにはしています。なんというか、格好つけすぎてダサいやつもいるし、あまりに直接すぎてもダサいし、その塩梅自体がそいつのセンスかなと。

賢者タイムに書いたライムも、溜まってるときに綴ったリリックも異常

呂布カルマさんの写真

−今回のインタビューは表現者の皆さんに“エロ”について話をお伺いしているんですけど、リリックを綴るときに性欲が役に立つことはありますか?

呂布:いえ、むしろエロは邪魔になるんですよ。自分の場合、腹が減っていたら飯食いたいし、溜まっていたら抜きたい。友だちに遊ぼうと誘われたら、遊びに行っちゃう人間なんで。「もうリリックを綴るしかやることないわ」という状態になってはじめて書ける。だから暇で他にやることがない状態にするためには、絶対に抜かないといけないんです。

−じゃあ呂布さんの場合、溜まってるときに書いた詞は楽曲にならないと。

呂布:そうっすね。たまにライブのツアーで地方に行ったときって謎に3時間くらい空き時間ができたりするんですよ。外だしオナニーもできない状態のときは、仕方なく書いたりします。でもやっぱり言葉が散らかるんですよ。溜まってると。

呂布カルマさんが歩いている様子

−散らかる。

呂布:そう。基準は設けてないんですが、パッと見てリリックの良し悪しはわかるんです。きちんと抜いた後だと同じ下ネタの言葉でも、なんかこう、品があるんですよ。とはいっても賢者タイムの状態ではそれもまた違うんですよね。雑念があまりに消えすぎていて、それもまた異常な状態だと思う。

−できるだけフラットにいることが大事なんですね。

呂布:自分はかなり極端な性格をしているので、10代の頃も賢者タイムになったら目の前のズリネタをビリビリに破って捨てたりしていたんです。さっきまでそれで抜いてたのに。冷静になって考えてみると異常じゃないですか。

−たしかに(笑)。

呂布:なので、賢者タイムを終えたあと頭の中に残っている言葉やフレーズこそが使える言葉ではないかなぁと思っていますね。20代の頃に出した3rdアルバムの「STRONG」で、自分の中のエロやドラッグ、リビドーは出し切った感覚はあって、あとはもうエロは散りばめるくらいで良いかなって。

−これからはどんなリリックを綴っていくのでしょう。

呂布:かつて鋭いライムを放っていた先輩方が歳を重ねて、童謡みたいなリリックを書かれる方も少なからずいて。それは個人的にはナシなんで、ある程度の雑味と鋭さは保っておきたいなとは思いますね。まあ後先考えず、目の前のことをフラットに綴るだけです。

呂布カルマさんが公園で佇んでいる様子

芸術はエロに勝てない。娯楽は余剰にこそ生まれる

−今回呂布さんにインタビューさせてもらったのには理由があって。いつも呂布さんはグラビアの画像をTwitterに載せているじゃないですか? それはグラビアがお好きでそれを公言しているからこそだと思ったんです。

呂布カルマ:そうですね。大学時代に篠崎愛のグラビアを見てから週刊プレイボーイを毎週買うようになって、それからはグラビアアイドルの画像をディグるのが趣味になりました。音楽のディグは仕事に近くなっちゃったから、純然たる趣味といえるのはこれくらいなんです。

−ともすれば、それは恥ずかしいこととして避けてしまいそうじゃないですか。でもそれを言いたいし、見せたいと。

呂布:はい。こんなに素晴らしいグラビア画像があるのでそれを見て欲しいという気持ちで。言い方を変えれば、自分の審美眼を誇示したいということですね。グラビアやAVに出ている人のことは基本的にリスペクトしています。女の子の一番良い時期を俺らに捧げてくれているので。

−好みのグラビア収集フォルダから画像を晒すことは、奇をてらっている意識はないんですね。

呂布:全然ないですね。普通に告知しても退屈だし誰も見ない。だったらグラビア写真の綺麗なねえちゃんを添付したほうが、Twitter見てる人も楽しいかなと。ビールのキャンペーンポスター広告があるじゃないですか。あれと同じ感覚です。あとは、例えば大きいケツが好きだとかガリガリの人は苦手とか、どうしても好みが如実に出てるから、俺がアップする写真を嫌がる人がいるんです。そういう人とはその時点でサヨナラできるというのも良いっすよね。

呂布カルマさんがインタビューを受けている写真

−ちなみに、呂布さんはどんなAVが好みですか?

呂布:基本的にファンタジーとして受け取れるものが好きですね。なんかずっとパンツにバイブ仕込んでるやつとか。ありえねぇだろっていうのがバカバカしくて好きです。好みのタイプは、尻がでかくて乳輪大きい子が好きっすね。

−それはなぜ?

呂布:なんか、偏見ですけど乳輪大きい子って優しそうじゃないですか。一方で、リストカットの跡が見えたり、その子の暗部が見えたりする作品は嫌っすね。基本的に元気な女の子が楽しそうにエロに没頭しているのを見たい。AVって、大抵の女の子は短い期間活動して辞めていく。その限りある一瞬を俺らは見させてもらってるんで、そこへの感謝がありますね。普通に考えて、あんなに可愛い子たちのセックスを見られるなんてあり得ないことですもん。私生活で会ったことのないレベルの可愛い女の子がセックスしてる姿を、俺は数百円で見てるのか…ってたまに我に返るんですけど、それってめっちゃすげぇって思いますよ。

呂布カルマさんの写真

−エロというもの自体にはどんな印象を持っていますか?

呂布:3大欲求に直結しているものなので、それはもうどうあがいたって芸術はエロに勝てないでしょうね。そこは完全降伏しています。

−例えば自分のライブより目の前の女のセックスを優先されたら悔しいとかはないですか?

呂布:ないですね。だって自分が曲を作る時だってエロを消化してから作っていますから。エロを差し置いてでも綴られたリリックなんてないですから。やっぱりどんな偉そうなこといってもエロが必ず先にくると思います。めちゃくちゃ眠いとき、めちゃくちゃ腹減ってるときもライブには行かないじゃないですか?

−たしかに、すごく眠いときにわざわざライブには行きませんね。寝ることを優先してしまいます。

呂布:性欲も同じくらい強いと思うんです。例えば、楽しみにしていたバンドのライブのチケットが手に入っていざライブ会場に行くぞっていうときに、ちょっとブスめの女友だちからヤレる感じのメールが来たら多分ライブ行かずにそっち行くじゃないですか。俺自身のライブに置き換えてみても、「そっか、じゃあまた今度で良いよ」ってなります。

インタビューを受けている呂布カルマさんとティッシュの写真

娯楽としての音楽をこれからも綴る

−今日お話をお伺いして、何に対しても好き嫌いや優劣がはっきりしている印象を受けました。

呂布:そうですね。白黒はっきりとさせたいですね。色んなものがあふれているなかで、「全部良いじゃん」ということもできるけど、「全部良いんだったら、別にお前じゃなくて良くね?」みたいな気持ちはある。全部良いかもしれんけど、より良いものはあるし順位は付けられるじゃないですか。そこから逃げてる奴は、だせえなと思いますね。「エロもラップも自分の言いたいことはきちんと言うよ。あとは各々で判断してくれ」と、そんなスタンスで生きていきたいです。

−ことなかれ主義は何も生まないと。30代半ばになって、リビドーから離れた呂布さんが今後どんな音楽を作るのか楽しみです。

呂布:まだリビドーはありますよ。だって35歳を超えてもオナニーしてるなんてガキの頃は想像だにしませんでしたから。ただこと音楽に関しては、初期衝動ではなく余裕がある人のところから生まれてほしいっすね。「衣・食・住・性」がちゃんと満たされた上での「余剰」で楽しむくらいが丁度良いと思ってるんで。 あとは、スープになるくらいまで咀嚼してしまった言葉だとやっぱつまらないんで、多少歯ごたえのあるものをこれからも作っていけたら良いですね。

道に立っている呂布カルマさんの写真

(文章/川越未満 カメラ/なかむらしんたろう 編集/サカイエヒタ)