ぼくらとエロの○○な関係。TISSUE BOXのキービジュアル

第一線で活躍する総勢22名のアーティスト、文化人、クリエイターに「自身とエロの関係」について聞いていく。 はたして、彼らにとって「エロ」とは?

石野卓球さんの写真

日本の音楽界を牽引してきたレジェンド・石野卓球。「このインタビューの依頼を受けたとき、これは1回では収まらないぐらい話すことがあるなって思ったんです」。取材開始早々、彼は笑顔でそう語った。そして自身が言ったとおり、事実、まるで深夜ラジオを聴いているような爆笑と感動に包まれた前代未聞のインタビューとなる。石野卓球、FANZA magazineに降臨!

はじめてのエロ本は、とりあえず舐めたよね

石野卓球さんとティッシュボックスの写真

−そもそも、石野さんがエロに目覚めたのっていつ頃なんですか?

石野:小学校低学年くらいじゃないかな。うち、店をやっていたんですよ。ほら、よく学校の隣とかにある、パンとか置いている店ありますよね。子どもの頃から雑誌が読み放題だったんで、営業していない日曜なんかは閉まった店でよくエロ本読んでましたよ。

しかもうちは立地が良くて、女子校の隣なんです。そんな環境だったから、まあそりゃ早く“目覚め”ますよね。

−そんな境遇だと周りの友人たちとの間にエロの知識差が生まれそうですね。

石野:そう。おっぱいを見ても興奮なんてしなくなった頃に「おっぱい、おっぱい!」なんて周りが騒ぐもんだから、「こっちは地デジ見てんのに、お前らまだ万華鏡見てんの?」みたいな感じでしたよ。でもそれはそれで孤軍奮闘です。俺だけどんどん進んじゃってるから、エロに対する疑問が生まれても、周りの友人たちとは共有できないし、大人にも聞けない。「こんなに際限なくエロに興味があるなんて、自分は恐ろしい病気なのかもしれない」って子どもながらに心配になってましたね。

−すごい子どもですね……そんな石野さんでも、はじめてエロ本見たときはやっぱり興奮しましたか?

石野:とりあえず舐めたよね。……舐めるよね? エロ本。

石野卓球さんがあごに手を添えて話をする様子

石野:当時、エロ本の黒く潰されたところにバターを塗ると、隠れた部分が見えるようになるって噂話があったんですよ。だからうちの店中のエロ本全部にマーガリン塗ってみたよね(笑)。でも黒塗りはとれなくて、やっぱりちゃんとしたバターじゃないとダメなのか……って。

−エロへの開花するのが早かったぶん、さぞや楽しかったんじゃないですか?

石野:いや、むしろその逆ですよ。エロをわかればわかるほど不安になるんです。今だったらエロの異ジャンル開拓の喜びってすごいけどね。一応、当時はまだ純朴な少年だったから。

俺がMに目覚めたばかりの頃、80年代のSM雑誌はまだまだ男がSの設定ばかりでね。男がMっていうのは当時は本当に少数派だったんです。学ランの襟を内側に折って背広っぽくして、国道沿いにある「安売り王」みたいな感じのビデオ屋でSM系の本を買ってました。で、勇気出してわざわざ買っても自分の求めていた中身じゃないとがっかりしてね。苦労してましたよ。仕方なく古本屋で、いわゆる“ゾッキ本”という新古本を買うんです。俺みたいな性の苦学生にとっては学割みたいなものでした。

石野卓球さんが笑顔で話している様子

SMやスカトロの前に、一回基本をおさえようぜ

−話は変わるのですが、以前のインタビューでSMやスカトロ系のVHSを再び集めているって言ってましたよね?

石野:そうそう! 記憶の中にある当時のレイアウトやコピーがどれくらい合ってるのか、歳を重ねてから確かめたくなってね。80年代のエロ本は比較的探すのが簡単なんだけど、スカトロ系のVHS探すのって本当に大変なんですよ。なにぶん性癖がインディーなもんで。

で、集めたエロ本やスカトロVHSを改めてチェックしてみたら、2つの雑誌がマッシュアップされてたり、インパクトあるセリフが全然頭に入ってなかったり。「え、こんなババアだったっけ!?」みたいな衝撃がたくさんあったね。記憶は美化されるもんですね。

−そのスカトロVHSって、エンタメ感覚で観るものなんですか?

石野:いやいや、スカトロ系はエンタメとして観ちゃダメでしょ! エンタメというよりはアスリートを見る感覚。「人間として生まれてきて、うんこを食べる」というアスリート的行為をする人のバックボーンに想いを馳せるのよ!

そう、たまに出演してる男優や女優がうんこを食べた瞬間、ハッて我に返って「オエッ」となることがあるんだけど、それを俺は「人戻り」って名付けたの。

石野卓球さんの写真

−(爆笑)。

石野:人間を卒業したのにかかわらず、たまにこっちに戻ってきちゃうところがなんとも奥ゆかしい。あと男優さんの身体の日焼けをチェックして、「普段は職人の仕事をしているんだな」とか、リストバンド焼けを見ると、「この人夏フェス行ったんだなぁ」なんて想像するのが楽しくて楽しくて。

−そんなところまで見てるんですか……!

石野卓球さんが話をする様子

石野:そうだ、今日絶対言っておきたかったのが、SMとかスカトロとか、いわゆる変態セックスって普通のセックスをした後にたどり着くものなんですよ。でも今の時代はネットのおかげで、免許がなくてもエロのA級ライセンスを簡単に取れてしまうというか……。童貞の人が前戯をしたこともないのに、やろうと思えば食糞まで楽しめちゃうのって、まあすごい世の中になったなぁって思いますよ。でも俺がその筋の先輩としてひとつ言っておきたいのは、まず一回、普通のセックスだけはしとけよ、と。

バッターボックスに立つときはさ、打ち方の基本は知っておかないとね。でも打ち方を知らないと、バットを股に挟んで、キャッチャーミット頭に被ってバッターボックス立っちゃうでしょ? それじゃあピッチャーも困っちゃうし、野球にならない。こういう人、まわりにも意外といるんですよ。

−ありがたいお言葉です。

建前のない人生を選んだ理由

石野卓球さんを斜め下から撮った写真

−それにしてもどうして石野さんはそこまでエロに対して正直でいられるんですか?

石野:ジェンダーロールの崩壊……のような意識が、昔から自分の中に強くあってね。女子校が自宅の隣にあった分、普段女性が男性の前では見せないバックステージを、幼い頃から見てきた過去が影響していると思うんです。建前じゃない部分を、早い段階で見聞きしているのが大きいと思いますね。

−たしかに。それは大きそうですね。

石野:昔は「建前がないと人に嫌われるんじゃないか」とか、「これはいき過ぎなんじゃないかな」と思っていたこともあったんですが、やっぱり全部出しちゃった方が良いですよ。

−じゃあ読者のみんなもエロを解放しちゃった方が良いと思いますか?

石野:それはものによります! 俺みたいに自分の性癖を他人と楽しむ・楽しませる覚悟があればいいけど、他人と共有できないものはナシ。最終的にエロは周囲の仲間や恋人と愛し合うための手段の1つだから。

−まともな意見ですね(笑)。

石野:俺、ピロートークが大好きなんですよ。やっぱり肉体関係があったからこそ見せられる人柄、話ってあるじゃないですか。「この人の性格って、この性癖から来てんのね」みたいなものって、セックスしないと見えてこない。オナニーももちろんいいけど、ひとりで壁当てするより、2人でキャッチボールやった方が楽しいよねって。

石野卓球さんが手ぶりをつけながら話をする様子

−ちなみに、年齢を重ねていく中で性欲が衰えたり、煩悩が減ったりすることはないんですか?

石野:全然。歳をとると煩悩が減るってよく言いますけど、そんなことありえないですよ。みんな偉いおじさんになっちゃって、立場上、煩悩を見せないようにしてみたり、エロを面倒くさがったりしてるだけで。むしろ俺は「あらゆることを煩悩として捉えてみよう」みたいなところがある。そうなるとやっぱりこういう人間になっちゃう(笑)。

−エロへの興味がご自身の創作活動に活きた感覚ってありますか?

石野:エロから学んだのかは分からないけど、音楽の掘り方は割とやってることが近いよね。例えばハウスとかテクノが好きだったら、その後は類似ジャンルのテックハウスにいくとか。そこはエロの好きなジャンルが徐々に広がっていくのと一緒だよね。

石野卓球さんが話をしている様子

石野:あと、「これは自分の好みじゃないな」って思っても、マナーとして異ジャンルのものも知るようにしてるかな。そこも音楽とエロは一緒だね。

−音楽もエロも、好みじゃないジャンルのものをあえて知ろうとする?

石野:そう。自分が嫌いなものはわざわざタッチしなくても生きていけるんですけどね。でも、むしろそういった嫌悪するものにこそ好きなものが隠れていると思っていて。それに、そういう余計な労力をかけたほうが人生豊かでしょう。自分の活動はそういう思想がベースになってるかな。

時々移動中の狭い車内なんかで、俺の湿った足の裏をピエール瀧の腕にくっつけるとさ、あいつすっごい嫌がるのよ。でもあるとき、「これ、女性にされたら嬉しい?」って質問したら、「嬉しい」って言うの。やっぱり嫌いの中に好きは隠れてるんだよ。

−それはすごい発見。好きと嫌いは表裏一体なんですね。

石野:だから俺は、潔癖症にはスカトロ好きが多いと思ってる。

−せっかくいい話だったのに…(笑)。

石野:しかし変な性癖もっちゃったら人生大変だよ。親と性癖は選べないからね。

石野卓球さんが手をクロスさせている写真

(文章/川越未満 カメラ/なかむらしんたろう 編集/サカイエヒタ)